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既卒生のためのガイド

なぜ既卒生が新卒生より合格率が劣るのか

理美容養成施設で勉強し、春の試験を受けて、免許を取得する合格率は、だいたい8~9割の位置にあります。 既卒で受験をするということは、何らかの理由で受験できなかったため、再受験というケースなどもあるかと思いますが、 1度以上の試験失敗を経て再挑戦をするのがほとんどでしょう。

まず、既卒生であることを再確認する

つまり、この試験失敗をした原因が何かあるから、既卒生なのです。 勉強不足、理解が足りていない、ケアレスミス、というように人それぞれではありますが、 何も考えずに以前の受験と同じ感覚で臨むと、同じ繰り返しになってしまうでしょう。 終わってしまったことを悔やむ必要はありませんが、反省点を活かすためにも、 自分は既卒受験であるということを再確認しましょう。

技能は受かっても、筆記で落ちた

ご存知の通り、理美容の資格試験は、技能と筆記に分かれます。 筆記の合格条件は、合計30問以上の正解と、各科目分野での0点がないこと、となっています。 これは、他の資格試験に比べれば、そこまでハードルの高いものではないでしょう。

それだけに、技能の練習の方にウエイトをかけてしまいがちになります。 決められた時間内に課題を丁寧にこなすためには、繰り返し練習して、 どの部分が足りていないかを確認しながら、身につけるのが基本ですから、 どうしても、筆記の勉強は後回しとなる方が多いのです。 しかし、筆記の知識を学ぶことにしても、同じことが言えるのです。 足りない知識はどこなのか、分かっているようで完璧に理解できていないようなところはあるか、 というようなことは、技能練習と同様に、やらないと身につかないことです。

一夜漬けのように、最後にササッと勉強して覚えられるのであれば、 新卒時の試験で出来ていたのではありませんか?

新卒と既卒では環境が異なる

通学生・通信生である間は、1年間ごとを一定のカリキュラムの下で学ぶことになります。 サボったり、手を抜いたりするのは、その人の問題でここでは論外ですが、 いずれにせよ、勉強する機会と時間を導いてくれる環境にあることには違いありません。

卒業してしまうと、このカリキュラムの環境がなくなってしまいます。 すべて、自分で1日の割り当てを考えて動かなければいけません。 しかし、丸一日、家の中で勉強するような生活は、なかなかできるものではありません。 ~をするつもりだったが1日が終わってしまったなんていうことは、勉強に限らず、よくあることでしょう。 用意された予定をこなすことに比べると、自分で予定を組んで実行することの難しさが、 既卒生に求められることになります。

また、通学期間中は、サポートを求める環境がある点も大きいです。 卒業後、結果がダメだったものに対してサポートをする養成施設もあるようですが、 実際のところは、いつまでも面倒は見きれないところの方が多いです。

早い段階からの準備を

独学で臨むためには、早い段階から準備を始めることが一番です。 1日の勉強時間が少なくても、早くから始めていれば、延べ時間は長くなりますし、 多少、予定通り進まなかったとしても、取り戻す時間が残っています。 これが、試験直前の数週間前から始めたとすると、どうでしょうか。 思っていたより勉強が進まなかったりして、もう目の前に試験日が迫っているのに、 こなす科目は残っている、なんてことにもなりかねません。

まずは、スケジュール管理から。 長期の計画と、1日単位のスケジュールをざっくりでもいいので考えてみることから始めましょう。 そして、週単位・月単位で、どの程度まで計画通りに進んでいるのか再確認をする。 自分でカリキュラムを組むことをしているわけですが、実際は必ずしも計画通りに進むとは限らないので、 遅れなどがないか、計画の微調整の必要をチェックしていきます。 思っていたより時間が取れない、ということに気づくこともあるでしょう。

流動的に、余った時間で勉強・練習をするよりも、最初からこの日の、この時間帯は勉強・練習する時間と決めてする方が、 オンオフのメリハリも付いて良いです。

何から始めればいいのかわからない

ただ教科書を眺めているだけでは、どこから手を付けるべきかわからない方も多いと思います。 また、過去問題をただただこなしているだけでも、勉強した気になっているだけ、となりかねません。

過去問題を解いてみることは、現時点での知識の理解度を測るのに有用なことです。 まったく解けない問題、解けたけど悩んだ問題、後から間違えた個所が分かった問題、余裕で解けた問題、 問題によって、いくつかの種類に分かれるでしょう。

余裕で解けた問題であれば、その分野の知識は一定の理解度に達していることでしょう。 なので、そこまで繰り返して強化する必要もないと思います。 一方で、まったく解けないようであれば、要復習項目としてリストアップしておかなくてはいけません。

結果的に解けたけど悩んだようであれば、100%の理解にまでは至っていないということを意味します。 悩む個所があるとすれば、「脆い部分」であると言えます。 その脆さ・あやふやさが、勘違いなどを生み出し、「正解っぽい選択文章」を選んでしまうことに繋がります。

ここで大事なのは、過去問題を解くことは「手段」であって、それ自体が「目的」ではないことです。 結果的に正解だった、というのが許されるのは、本番の試験のときだけでしょう。 準備段階で、運任せなようでは、いつまで経っても知識が身につきません。 理解が足りない個所をあぶり出し、勉強のポイントとするのが「目的」です。 問題を解くだけで、どこか満足してしまって、そこで終わってしまうことはありがちです。

問題文章の表現に慣れる

また、過去問題を解くことは、問題文章の表現に慣れるという意味も持ちます。 理美容の筆記試験は、教科書のどこかに書かれている内容を基に出題されますが、 問題自身が教科書に載っているわけではありません。 問題文章であるからには、誤りの文章も含まなくてはいけないわけですから、 こういうものも、当然ながら教科書に直接書いてあることはありません。

初見では「ん?」となることであっても、繰り返し読んでいれば、慣れによって、読みやすくなります。 実施回ごとに読んでいるうちに、科目分野によっては、似たような問題が並ぶことに気づくことでしょう。 まったく同じ問題になることは、滅多にありませんが、一文だけ異なり、ほぼ似たような問題というのは、 よくあることです。物質の性質や機能などは、変わりようがない事象ですし、法令に関するようなことは、 元となる法令が変わらない限り、問題も変えようがないのです。 こういった問題に慣れていれば、解くときにも詰まりにくくなるでしょう。 ちなみに、当編集部で発行しています「想定問題集」では、出題問題を科目分野ごと・出題内容ごとに、 並べ直して編集しています。

分からなかった個所を中心にまとめなおす

教科書というのは、その教科を学習するための本です。 なので、説明のための説明も必要となってきます。 また、基本的な項目の説明から編纂しなくてはいけないので、 さらに奥深く掘り進んだ内容は、後述となり、飛び飛びになってしまうこともあります。 まったく知識のないところからスタートで教えるためには、これは仕方ないことです。

ただ、ポイントごとに学習している場合、これが回りくどく感じることもあります。 こういった要点ごとに、自分で項目をまとめなおすのも勉強方法の1つです。 どのようにまとめるかは、その人ごとで変わってくるかと思いますが、 まずは、教科書の要点となる部分に下線を引いていく、そこから項目のグループ化をしていく、 特徴などをピックアップしていき、ノートに記述していく、という具合に進めれば、 ある程度のまとめができるでしょう。まとめ書きをするときは、あとでメモ的なことを書き足せるように、 多少余白を残しておくと良いです。

また、出題文章も、一定の「まとめ文章」であると言えるでしょう。 誤りの文章を、正しく直してみることで、覚える項目が見えてきます。 これをまとめに足していけば、頭に入りやすくなるかと思います。

なお、当編集部発行の参考書「筆記検定対策ノート」は、試験に用いられる項目を中心に要点をまとめなおした内容となっています。

あまり難しく考えすぎないで、まず行動に入る

後半は、筆記に関する内容が中心となりましたが、 技能練習でも、同じようなことが言えることかと思います。 うまくこなせない個所があれば、闇雲にこなそうとせず、 やり方に問題はないか、もう少し上手に手際良く進められる方法はないか、振り返ってみる。 時間が収まらないのであれば、どこに時間がかかってしまっているのかチェックする。 施術を行うのと、紙に向かって解答をするのとの違いなだけで、 練習・復習といったことで注目する点は同じなのです。

免許を取って、実際に仕事に就くようになれば、もっと勉強しなくてはいけないことが増えてきます。 お客さん相手に施術するための技術向上から始まり、その時の流行に合わせた技術を学ぶ必要も出てきます。 手を動かすだけでなく、その仕組みや理論から学ぶ必要もあるでしょう。 独立でもしたら、技術者としての知識だけでなく、運営や経営といったことも学ばなくてはいけません。

受験のための勉強や練習は、そのための前準備のようなものです。